東京高等裁判所 昭和27年(う)3587号 判決
弁護人が証拠とするに同意し原判決に証拠として引用されている所論各分析報告書を査閲すると被告人石川友江に関する分については同人の所持していた二包の粉末合計〇、四六六瓦を分析した結果ヂアセチルモルヒネ、ハイドロクロライドが六〇、八%入つていたことが判明した旨又被告人小玉洋子に関する分については同人の所持していた粉末四包(合計〇、一三一瓦)を別個に試験して見たところヂアセチルモルヒネ、ハイドロクロライド(ヒロイン)の入つている反応を明らかに示したが少量の為量的な分析は行わなかつた尚残量は存しない旨の夫々記載があり後者については定量分析が行われなかつたことは所論の通りである、抑麻薬取締法第四条第三号にいうヂアセチルモルヒネ及その塩類並びにこれらを含有する一切のものの所持罪を処罰する場合その純度の程度が量刑上考慮せらるべきことは勿論であるが純度が不明であるからといつて必しも量刑が不可能であるとは云い得ない。本件記録に徴すると原審は本件の刑の量定について弁護人の指摘するような被告人の性格、境遇、犯罪の動機、再犯の可能性等の諸点は元より前敍の如き純度不明の点も考慮に加えたるべきことはこれを察知するに難くないのであつて原審の裁判官が不公平な裁判を為したとの事実を窺うべき何物をも発見することはできない。弁護人は原審が諸般の情状の審理を尽さざるものとし且本件については定量分析による純度の証明が存しないから憲法第三十七条第一項に違反すると主張するものの如くであるが同条にいわゆる「公平な裁判所の裁判」とは組織構成等において不公平の惧のない裁判所の裁判という意味であつて個々の裁判の具体的内容の当否には関係のないものと解すべきであるから弁護人の右主張は当らない。論旨は理由がない。